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アノミー(無規範)への屈伏を許す 「緊急事態条項なし」の敗戦憲法④

2020-09-20

評論家の西部邁氏は、「歴史を振り返れば、俗世において危機が実際に発現し、カオス(混沌)とよんでさしつかえないような状態に国家が陥った事実がいくつも列挙することができる」とし、通常は「非常」と呼ばれているような事態に対処する「規範」をもっているのが憲法だと指摘している(「憲法意識―宗教的自然と歴史的当然」=月刊『ボイス』2000年6月号)。

ところが、日本国憲法には緊急事態条項が存在しない。規範なき憲法なのだ。ドイツはさっさと敗戦体制から脱却したが、日本はそのまま「敗戦体制」「戦後レジーム」のままである。まさに政治、いや国民の不作為である。それで緊急事態条項はかねてからの課題となってきた。1999年に衆参両院に「憲法について広範かつ総合的に調査を行う機関」として憲法調査会が設置され(2008年、憲法審査会設置に伴い廃止)、与野党は5年間、論議を重ねた。

1946年(昭和21年)10月29日、「修正帝国憲法改正案」を全会一致で可決した枢密院本会議の模様。  写真はWikipediaより

衆院調査会では非常事態条項を「憲法に規定する」との意見を述べた議員は31人に上り、反対意見は7人にとどまった。それを受け衆院の最終報告書(05年4月)に「非常事態」が明記された。報告書は同規定を「多数意見」とし、その根拠を次のように挙げている(毎日新聞05年4月16日付「最終報告書・要旨」)。

①非常事態においては、内閣総理大臣に対し権限を集中し、人権を平常時よりも制約することが必要な場合があり、そのような措置を発動し得る要件、手続き及び効果は憲法事項であること

②地域紛争、地球環境の劣化、グローバリズムの進展等による相互影響関係、テロリズムの蔓延等、現代社会は、多様な危機を内包しているが、それにもかかわらず、非常事態への対応規定が設けられていないのは、憲法の欠陥であること

③非常事態への対処に当たっては、為政者に超法規的措置の発動を誘発することが多いので、憲法保障の観点から、それを防止するために規定が必要であること

News Letter令和2年7月号より

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